沖縄県立博物館・美術館で開催中の「驚異の写実―ホキ美術館名品展」の関連イベント「写実絵画教室」に参加してみました。
写実絵画教室の講師の先生は宮城教育大学の安彦文平先生。すごく気さくな方で、本来なら2日かかってやるようなカリキュラムを3時間で! という無茶振りにも快く応じてくださったステキな先生です。
タイトな時間でも手取り足取り丁寧に教えてくださいました。
これなら「自分でも描けそう!」と思えるしかけ
ワークショップでは、画用紙の一部に図版(写真)を貼って、写真に写っていない部分を想像で描く、というものでした。
配布された道具は以下です。
- 画板
- 鉛筆(三菱uni B、2B、4B)3本
- 練り消しゴム
- 画用紙(F4?タテ33.7cmxヨコ25.4cm)
- 図版
- 三角定規
- のり
- フィクサー(鉛筆の鉛(コナ)を定着させるもの)
まず、図版を選ぶ
先生が用意してくれた図版は建築物とか風景のモノクロ写真。
ちゃんと描きやすいようにあらかじめレンズによる歪みなどが補正され、紙に印刷されたものです。
数種類ある図版から、自分の描きたいもの(描けそうなもの)を一枚決めます。
悩みましたが、時間もなかったので「一番描きやすそうな」和室の風景写真を選びました。
画用紙の一部に貼り付ける
画用紙はタテ使用でもヨコ使用でもOK。選んだ図版を画用紙にのりでしっかり貼り付けます。
貼り付ける条件は「平行、垂直の位置をしっかり取ること」だけ。
自分が「想像で描けそうなところ」をイメージしながら好きなところに図版を配置します。
私は襖絵を描いてみたかったんで、図版の右側にスペースをあけて貼りました。同じ図版を選んだ他の参加者の方は、私とは反対側の左側にスペースを設け、立派な枯山水を仕上げてました。すごいー!
消失点を捉える
図版をのりでしっかり貼り付けたら、写真から消失点を見つけます。
消失点から三角定規を使って、図版の外へ延長線を引きます。この補助線を引くだけで、なんだか絵が描けるような気がしてくるので不思議です(笑)。
絵ってパースが狂うと一気に素人っぽく見えてきちゃうので、このプロセスは超重要です。
図版の周囲1cmの明度を合わせることに集中する
絵を描く、のではなく「図版周囲1cmの明暗を写真と揃える」ことにまず集中します。
ここでの先生のアドバイスは「まず、黒白コントラストのはっきりしているところから始めること!」そうすれば、写真との境目がなんとなくわかりにくくなり、「なんだか絵が描けている気がしてくる」のだそうです(笑)。
いや、でもコレマジ本当…。描いてる途中で…
「自分! 絵うまいやん! 描けるやん!」
と思っていたら、見てるとこ写真だったつーね(←あほ)。
人間の目の錯覚を巧みに利用した画期的な描き方です! すんばらしい!
あとは淡々と淡々と描く範囲を広げていきます。写真に写っていないところはスマホの画像検索で参考画像を探しつつ描いていきます。
先生のレクチャーも含めさすがに3時間では終わらないので、残りは宿題として持ち帰り…。結局トータルで10時間くらいかかったでしょうか?
久しぶりにこんなに黙々と作業しました。 たのしかった!
今まで生きてきた中でかかってしまった「絵が描けない」という呪いも少しだけとけて、ちゃんと描けるんだ! っていう自信につながりました。
「絵が描けない」という呪いはどこからくるのか?
私は比較的、人生で絵を描く機会が多かったのに、どうしても「絵が描けない」という思いにがんじがらめになって、手を動かせなくなってしまうことがよくありました(今でもあります)。この呪いは一体いつかけられたのでしょう?
学校の先生の何気ない一言は大きい
いくつか原因はあると思います。
自分より上手に絵を描く人の存在だとか。
私の場合は、学校の先生の何気ない一言が結構尾を引いている様でした。(先生、ごめん。)
2年生くらいの頃、版画の授業で「働く人」というテーマで市場で見た働くおじさん(ダンボールを運んでいるおっさん)を版画で表現しました。
三者面談の際、私の版画を見た先生が母に言った一言を今でも覚えています。
「彼女の絵は正確すぎて、面白くないんです。子どもの絵は腕がぐにゃーんと曲がっていたり、画面からはみ出しそうな元気な絵の方が、(賞に)選ばれるんです。」
的なお話でした。 おっしゃる通りごもっとも。
肘を正確な位置で曲げただけなのに…(`;ω;´)! こんちくしょう。
まー良かれと思ってのアドバイスだったのでしょうが、この時から私は「面白い絵が描けない自分、面白くない自分」という呪いを自分で自分にかけてしまった気がします。
クリエイティブワークに従事しながらも、自分の仕事に全く自信が持てないあたりとか、まさにこの呪いが尾を引いています。
「ああ、そうさ! わたしにゃ面白いもんなんて作れないのさっ! (`;ω;´)」的にいじける自分…。
先生の指導法もナゾだった
続きまして、小学校3年生の担任の先生の絵の指導方法もナゾでした。
とにかく「マッキー」で絵を描かせる先生でした。「消しゴムを使わないよう」指導する意図があったみたいなんですが、小さい私には理解不能でした。
子どものころから几帳面だった自分にとって、「訂正がきかない」マッキーでのお絵かきはなかなかツライものがありました。もう、一筆も先に進まない…。以来「絵を描く」ハードルが格段に上がってしまったのでした。
おそらく先生の意図は全く伝わっておらず…マコトに残念な結果に。
美術の指導って難しいですね。ってか、逆に何も指導しないほうがいいんじゃねーの?って思っちゃう(笑)。
こんな感じで「絵が描けない」呪いにかかってしまう人は日本全国津々浦々にたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?
うーん…。
長くなりましたが…
写実絵画教室は絵のリハビリに最適でした。
「絵が描けない」呪いにかかっている方は、是非、このお絵かき方法を楽しんでみてください。
意外とちゃんと描けるんだ!って自信につながります。そして実際、脳がまんまと騙されて、一気にトラウマ解消!される方もおられるやもしれません。
おまけ 鉛筆について
用意された鉛筆は三菱uniだったんですが、先生によるとSTAEDLERが描きやすいです。とのこと。
青いSTAEDLERとおっしゃってたのでおそらくコレかと…。
でもしきりに「自分はこの方(STAEDLERの方)が慣れてるから、三菱uniもいい鉛筆です!いい鉛筆ですよ!」とフォローを忘れない先生…(いい人か!!)
安彦先生、どうもありがとうございました!
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