沖縄復帰前後展

2022年3月23日

2022年 弥生/沖縄県立博物館・美術館さま

沖縄県立博物館・美術館さま「沖縄復帰前展・復帰後展」のフライヤー、ポスター等をデザインさせていただきました。

デザインするにあたって担当学芸員さんから借りた本↓

  • 『戦場が見える島・沖縄 —50年間の取材から』
  • 『復帰40年記念 博物館特別展 Okinawaから沖縄へ モノが語る激動の時代 1945~2012』

『戦場が見える島・沖縄ー50年間の取材から』は報道写真家の嬉野京子さんが見た戦後沖縄の米軍統治の様子や復帰闘争の様子をまとめた一冊です。

沖縄復帰50年を迎える2022年

大半のウチナーンチュが「復帰を知らない世代」になった。

1972年生まれのいわゆる「復帰っ子」が50代に!

て言っても復帰の年に0歳なわけだから、記憶なんてないに等しいわけで。

かくいうわたしも復帰後の生まれ。この世に存在してもいないのです。

さて、どうしよう…?正直何もわからないので、知ってる人から聞き込みを…。

復帰当時40歳であった父に話を聞いてみた

ほとんど何も覚えていなかった(笑)。

1972年の復帰当時、私の父は40歳だったはずなのだが、あまりに昔のこと過ぎて覚えてなかったです(笑)。

察するに働きざかりであったわけで、戦争未亡人となった母、子ども2人、妊婦の妻を抱えてがむしゃらに毎日働いていたんでは?(と思いたい。)

何も覚えていないことを悪いと思ったのか、父は復帰の痕跡が残っているものを貸してくれました(笑)。

復帰前に使われていた琉球政府のパスポート
おなじみ琉球政府のパスポート
琉球政府発行の無線従事者免許証
これはちょいと珍しいかもしれない琉球政府発行の無線従事者免許証

復帰の痕跡というより、琉球政府の痕跡か…

父は戦後、米軍基地内の飛行場で通信管制官の見習い的な仕事をしてたんですが、復帰前に「このまま米軍施設内で通信管制官として働くか」「日本の公務員試験を受けて通信管制官になるか」の二択で、日本の公務員試験を選択したようです。

当時の沖縄のあちこちで、人生の岐路に立たされた人がいたんではないかと推察されます。

担当学芸員さんに話を聞いてみた

担当学芸員さんは復帰当時幼稚園生?小学校低学年?そのくらいの年で、日本円の一円玉の軽さに

「これ、水に浮くんじゃ…? オモチャかよ!」とショーゲキを受けたそうです。

また、カラーテレビ放送が始まった影響もあったためか

「復帰の日を境に、世界がカラーに見えた」

のだとか…。(※実際には復帰前の1968年5月にカラーテレビ放送は始まっていたみたいです。でも一般家庭にカラーテレビが浸透していたかどうかはわかりません。どうだったのでしょう?)

当時の沖縄全体が明るい未来への期待感を醸していて色づいた景色を見せたのでしょうか?

でもこの言葉がヒントとなりビジュアルのイメージが固まりました。

復帰前の沖縄はモノクロで

復帰前の沖縄はモノクロで表現することにしました。

嬉野京子さんが写真を提供してくださるということで、書籍の中からいいカットの写真を選びました。

チラシは明るい未来を想起させるイメージを使いたかったので、眼力の強い笑顔のおじさんの写真を選びました。

沖縄の復帰闘争や基地問題は暗くなりがちですが、明るい沖縄の未来を目指してきたことの方をアピールしたい。

そして、先人たちがどんな思いでそれを乞い願ってきたか…。その経緯は展示で見て欲しいと思いました。で、それを「希う、未来」のキャッチコピーに込めました。

復帰後の沖縄はカラーで

一方裏面の復帰後展については、先ほどの学芸員の話を受けてカラー、レトロカラーで作ることにしました。

なにかキャッチーなイメージはないかと『復帰40年記念 博物館特別展 Okinawaから沖縄へ モノが語る激動の時代 1945~2012』(←復帰40年の節目で行われた特別展の図録)を漁っていたところ、見つけました!可愛い子を。

中央にいるナナサンマル人形です。かわいい!「車は左」。

ナナサンマルは1978年7月30日。沖縄の車通行がアメリカ式から日本式に切り替わった日です。それを案内するナナサンマルガール(笑)。

この展覧会の広報は彼女に大活躍してもらうと思います。

それとキャッチコピー。この展覧会のキャッチコピーは学芸員さんたちがブレストして出てきたもの。

「いちまでぃん かなさ オキナワ」とは方言で「いつまでも愛おしい沖縄」という意味。

郷土愛に満ちたとても素敵な言葉だなーと思ったので、キャッチコピーとして使わせてもらうことにしました。

沖縄復帰50年特別展 「復帰 前夜―。希う、未来

  • 会場 沖縄県立博物館・美術館(おきみゅー)博物館常設展示室 歴史部門展示室
  • 会期 2022/3/18(金)〜8/21(日)
  • 休館日 毎週月曜日。3/22(火)7/19(火)ただし月曜日が祝日の場合は開館し、翌平日が休館。(※6/28〜7/7まではメンテナンス休館)
  • 時間 9:00-18:00(金・土は20:00まで)※最終入場は閉館の30分前まで
  • 博物館常設展示室の入館料が必要です。

復帰50年特別展 「沖縄、復帰後。展 ーいちまでぃん かなさ オキナワー

  • 会場 沖縄県立博物館・美術館(おきみゅー)博物館企画展示室・特別展示室1・2
  • 会期 2022/7/20(水)〜9/19(月・祝)
  • 休館日 毎週月曜日。ただし月曜日が祝日の場合は開館し、翌平日が休館。
  • 時間 9:00-18:00(金・土は20:00まで)※最終入場は閉館の30分前まで
  • 観覧料 一般 ¥1,000(¥800)高校・大学生¥500(¥400)小・中学生¥200(¥160)※( )内の金額は前売ならびに20名以上の団体料金

デザインメモ

復帰前、復帰後と表裏でモノクロとカラーを使い分けました。

タイトルの下に復帰の日「1972年5月15日」の日時を入れました。前夜は1972年5月14日から15日に切り替わる瞬間を、復帰後は1972年5月15日から16日に切り替わるタイミングを表しました。

復帰の日、というと「5.15!」と明示されますが、沖縄に暮らす人間にとって復帰の前も復帰の後も関係なく毎日毎時間が淡々と過ぎていきます。そんな様子がカレンダーで表現できたらいいな、と思いました。