2024年 如月/アポロサイエンスさま
アポロサイエンス科学実験教室さま「アポロサインエンスプレゼンツ すべての虫ぎらいにお届けする アートと虫の美しい世界」のフライヤー、ポスター、展示デザインを担当いたしました。
「虫ぎらい」の私が虫展の担当をするなんてね…。
虫ぎらいは容赦ない
私は虫がきらいです。
博物館・美術館という施設は「虫を入れぬ不断の努力」をしている施設なので、基本的に館内には虫がおらず極めて快適空間です。
虫を見つけ次第、スタッフが生死を問わず、即!捕獲するので蚊やハエすら飛んでおりません。
人生のほとんどを「虫ぎらい」で通してきた私は、コロナ騒動直前に予定していた「大昆虫展」の担当も無事外れ、さらにコロナで展覧会自体中止になり、ほっと胸をなでおろしたのでした。その矢先…
「虫ぎらい」に虫を見せに来るヤツがいる…。
時々、展覧会で関連イベントなどをお願いしたことから仲良くなったアポロサイエンス科学実験教室主宰のセイタ先生が、ひょんなことから打ち合わせのたびに自作の昆虫標本を持ってくるようになりました。
嬉々として自作の昆虫標本作品を見せる彼に
「いや私、虫、嫌いなんで…」
と何度冷たい視線を浴びせたかわかりません。そう、「虫ぎらい」は容赦ないのです。それは嫌いなピーマンを絶対口に入れない幼児に同じ…。
私も「虫」がいる世界をこれまでスパン!と切り捨てて生きてきました。
セミもコオロギもカブトムシもクワガタも、とりあえず6本脚の茶色い生きものはすべて「G」と同じ。生死を問わず虫は自分の視界から除外して徹底的に避け、昆虫図鑑を触るのさえ無理でした。
ところがある日、セイタ先生が持ってきた作品に対して、私の口から思わず「きれい!」と言う言葉が出てきてしまいました。そしてその言葉を、セイタ先生は聞き逃しませんでした。
ほどなく、彼は自作の昆虫標本作品をコンテナ2つ分持ってきました。いや、頼んでないし(笑)。
「虫も犬とか猫みたいにもふもふしてたらみんなに受け入れてもらえるのに…」とぼやくと、
「それがいるんですよ!もふもふの昆虫!」といってライオンコガネを持ってくる。
(ぜひ展示室でご覧ください。ちょっと、かわいい、かな?)
さらに畳み掛けるように、セイタ先生が発した「デザイナーなのに「虫がきらい」なんてもったいない!こんなにキレイなのに!」の一言が、今回の展覧会が生まれるきっかけとなりました。
たしかに…。デザイナーたるもの、デザインの参考にできそうなものは貪欲に取り入れなければ、と思ったのでした。
「アート×昆虫標本」はこうして生まれた!
セイタ先生は普段、アポロサイエンス科学実験教室で先生をしているので、日々お忙しく過ごされているのですが、コロナ騒動のころ実験教室がお休みになったうえ、自宅に閉じ込められる日々が続きました。
そのころに「自分がこれまで集めてきた昆虫標本を愛でる時間がたんまりできた」のだそうです。
ポジティブか!
こんなきれいな昆虫たちをもっともっと多くの人に観てもらうには?と、「アート」と「昆虫標本」をかけ合わせることを思いついたんだそう。
自宅待機が続く間、日がな一日「アート昆虫標本」を作ってはニヤけていたんだそうです。変態ですね。
そしてその作品はいつの間にか「コンテナ4つ分」になっていたのでした。
「きらいな人に見せる」難しさ
とはいえ、セイタ先生が「思いついた順、できた順」に持ってくるアート昆虫標本をお客さまに見ていただくには「ストーリー」足りない。
勇気を出して苦手なものを見ようとしてくれるお客さんに「ああ、苦手だったけど見てよかった」「ちょっと世界が変わった!」っと思ってもらえるような何か、を用意せねばなりません。
もう半ば強引に
- §1:虫の美しさ
- 装飾美 ー色・もようー(とにかく、「虫」はキレイだよ!とひたすら洗脳)
- 造形美 ーおもしろいカタチー(少し見慣れてきた頃に虫のカタチに注目してもらう)
- 生き様の美 ー虫たちの能力ー(虫は計り知れない能力も持っていることを伝える)
- 間章:日本人と虫
- 昔は日本人と虫は近しいところにいた、であろう痕跡を紹介。
- §2:虫からのおくりもの
- インスピレーション(虫をヒントに生まれたアート作品の数々)
- 生物模倣(バイオミメティクス、虫の観察から生まれた人間の生活を豊かにする技術の数々)
と章立てを作りました。会場レイアウトを試行錯誤しながら作っている間にも
「新しい作品ができました!」と続々と増える作品ー。(こら!やめんか!)
どんどん広げられる風呂敷を前に、正直、予定通り展覧会が開けないのでは?と焦りました(笑)。
図録用の撮影時には100点余だった作品がいつの間にか140点になっていたのでした。ヒドイ(笑)。
僭越ながら「虫ぎらい」代表としてレイアウトを組みました。
「虫ぎらい」な私が「この順番ならきっと大丈夫、だんだん慣れてくるはず」と思った順番に並べストーリーを作っています。
というわけで、虫は大きらいだけど、
- これから親になる方
- 彼氏彼女が虫好きでなんとか歩み寄りたい方
- デザイナー、アーティスト、ものづくりに携わる方
には、展覧会入口にある「本展覧会のトリセツ」を熟読のうえ、会場をご覧いただければと思います。
キャプションはすべてアリス・レジスターさんに丁寧に英訳していただきました。(アリスさんありがとう!)
セイタ先生がおっしゃるように、確かに昆虫がいないと、植物の受粉も成り立たないし、動物のフンは分解できないまま。「昆虫」がいないと地球はうまく回らないのです。これまで毛嫌いしてきてごめんなさい。
おかげさまで、私もじっとしている虫を見れるくらいには成長できました。でも向かって飛んできたらきっと死ぬ。白目になる。ごめん、虫。
展覧会を見る前と後で、あなたの「虫との距離感」がどう変わったのか、あるいは変わらなかったのか、SNSで投稿いただけるととても嬉しいです。
表の壁に感想を書いて貼るとステッカーが1枚、SNS投稿でさらにステッカー1枚のプレゼントキャンペーンもあるそうなので、ぜひ。
「アポロサイエンスプレゼンツ すべての虫ぎらいにお届けする アートと虫の美しい世界」
- 会場 沖縄県立博物館・美術館(おきみゅー)博物館特別展示室1
- 会期 2024/4/2(火)〜5/6(月)
- 休館日 毎週月曜日、4/30(火)。ただし4/29(月)、5/6(月)は開館。
- 時間 9:00-18:00(金・土は20:00まで)※最終入場は閉館の30分前まで
- 観覧料 一般 ¥800(¥640)高校・大学生¥600(¥480)小・中学生¥300(¥240)未就学児(3歳以上)¥100(¥80)※( )内の金額は前売ならびに20名以上の団体料金
デザインメモ
虫ぎらいにもかかわらず、不覚にも(笑)「きれい」と思ってしまった作品をメインにしました。作品自体が「和モダン」っぽい雰囲気を醸していたのであしらいもそれに合わせました。
タイトルの文字はメインビジュアルの「スカシツバメシジミタテハ」のしっぽの朱色。「虫」の文字は触覚風にかわいくしてみました。
「虫」と「蝶」をあわせて家紋風のロゴも作ってみました。
虫模様のサコッシュ、トートバッグ、クリアファイル、マステ、ネイルシールなんかもご用意しています。ミュージアムショップゆいむいで取り扱っています。