有機フッ素化合物の米国毒物・疾病登録局(ATSDR)のレポートに関する要請・提言

The Informed-Public Projectは沖縄県内で、嘉手納飛行場、普天間飛行場での米軍基地由来と考えられる有機フッ素化合物についての監視・調査活動・政策提言を行ってきました。

沖縄県は米国環境保護庁(EPA)の生涯勧告値70ng/Lを、飲料水の安全のチェックの目安や、検出地での濃度の判断に用いています。

米国では毒性物質・疾病登録庁(Agency for Toxic Substances and Disease Registry, ATSDR)の「パーフルオロアルキル基の毒性プロファイル:パブリック・コメントのための草案 (Toxicological Profile for Perfluoroalkyls: Draft for Public Comment)」(以下、ATSDRレポート)が2018年6月20日に発表されました。このレポートの発表でEPAの生涯勧告値に頼ることの疑念が科学者、市民グループから示されています。

IPPは、ATSDRレポートと、それをめぐる米国の動きを鑑み、沖縄県が早急に現在の政策を見直し、適切な措置を講ずることを促すための警告的な提言をする手紙を書きました。

この要請書は琉球新報(2018.7.11)、沖縄タイムス(2018.7.12)に報道されました。写しは関係市町村、県議会関係委員会、自治会等に送付しています。

以下、要請・提言書です。



2018年7月8日

沖縄県知事 翁長 雄志殿
沖縄県企業局長 金城 武殿
沖縄県環境部長 大浜 浩志殿
沖縄県保健医療部長 砂川 靖殿
沖縄県企画部長 川満 誠一殿
沖縄県知事公室長 池田 竹州殿

The Informed-Public Project
代表 河村 雅美

 インフォームド・パブリック・プロジェクト(The Informed-Public Project, IPP)は、環境、主に米軍基地に由来する汚染問題について調査・監視・政策提言をする団体です。これまで米軍基地由来と考えられる有機フッ素化合物のPFOS/PFOA汚染の問題に取り組んできました。

IPPは沖縄県や県民に本件に関する米国の情勢を伝え、県民の安全と健康を守るために、沖縄県が適切な対策をとることを提言するためにこの手紙を書いています。

米国の毒性物質・疾病登録庁(Agency for Toxic Substances and Disease Registry, 米国保健福祉省の一部局、以下ATSDR)は「パーフルオロアルキル基の毒性プロファイル:パブリック・コメントのための草案 (Toxicological Profile for Perfluoroalkyls: Draft for Public Comment)」(以下、ATSDRレポート)を2018年6月20日に発表しました【1】。この手紙は、ATSDRレポートと、それをめぐる米国の動きを鑑み、沖縄県が早急に現在の政策を見直し、適切な措置を講ずることを促すための警告的な提言です。

【1】
Agency for Toxic Substances and Disease Registry ”Toxicological Profile for Perfluoroalkyls Draft for Public Comment”. https://www.atsdr.cdc.gov/toxprofiles/tp.asp?id=1117&tid=237.

有機フッ素化合物は、発がん性があることが確認されています。その他にも、疫学的な調査では肝臓(血清脂質レベルの増加)、心血管(妊娠誘発高血圧症、子癇)、内分泌(甲状腺疾患)、免疫(ワクチンへの抗体反応低下、喘息)、生殖(生殖力の低下)、発生(低体重等)への影響の可能性が指摘されています【2】。

【2】
ATSDRレポート, p.25による。詳細はATSDRのサイトを参照のこと。 https://www.atsdr.cdc.gov/pfas/ (2018年7月5日アクセス)。

沖縄県では嘉手納基地、普天間基地が汚染源と考えられるPFOS/PFOAの深刻な汚染が近年、確認されています。

沖縄県企業局は、嘉手納基地が汚染源と推測されるPFOS/PFOA汚染に対処してきました。2013年から、北谷浄水場の水源の河川等のPFOS/PFOAを計測し、安全な水を供給するために粒状活性炭フィルターを設置するなどの対応をしてきました【3】。

【3】
沖縄県企業局HP「企業局における有機フッ素化合物の検出状況について」 https://www.eb.pref.okinawa.jp/opeb/309/619  (2018年7月5日アクセス)。

沖縄県環境部は上記の状況を受け、2016年度から全県的な調査を実施し、高濃度のPFOS/PFOAが検出された普天間基地周囲の調査を継続しています【4】。

【4】
沖縄県環境保全部HPで公表されている。最新版は「平成29年度有機フッ素化合物環境中実態調査の冬季結果報告について」 http://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/hozen/mizu_tsuchi/water/pfos-pfoa_h29-winter-result.html (2018年7月5日アクセス)。日本政府とのやりとりの文書は環境政策課のHPで公表されている。「宜野湾市湧水において検出された有機フッ素化合物の対策等についての沖縄防衛局からの回答」 http://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/seisaku/kichikankyo/ginowan.html (2018年7月5日アクセス)。

いずれも米軍が1970年代から使用していた泡消火剤に含まれていたPFOS/PFOAによる土壌汚染・地下水汚染の影響であると推測されます。
また、沖縄県環境衛生研究所では、沖縄本島全域の河川と3海域で有機フッ素化合物18物質の調査を2014年に実施しており、他の有機フッ素化合物の汚染も確認されています【5】。

【5】
沖縄県環境衛生研究所HPで公表されている。塩川敦司・玉城不二美「沖縄島の河川及び海域における有機フッ素化合物の環境汚染調査」『沖縄県衛生環境研究所所報』第51号(2017)http://www.pref.okinawa.lg.jp/site/hoken/eiken/syoho/documents/51-p33-48.pdf (2018年7月5日アクセス)。

沖縄県では、政策を実施するに当たり、PFOS/PFOAの国内の規制値がないために、米国環境保護庁(EPA)が2016年に設定した70ng/Lという生涯勧告値を基準にしています【6】。

【6】
EPAのPFOS/PFOAを含むペルフルオロアルキル化合物(PFAS)についての政策については”Per- and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS)”を参照。 https://www.epa.gov/pfas(2018年7月5日アクセス)。環境省は以下のファクトシートを参照。「国内等の動向について(PFOS)」 https://www.env.go.jp/council/09water/y095-13/mat07_2.pdf, 「[18]ペルフルオロオクタン酸及びその塩」(PFOA)。 https://www.env.go.jp/chemi/report/h19-03/pdf/chpt1/1-2-2-18.pdf (2018年7月5日アクセス)。

これまで企業局では、北谷浄水場の浄水のPFOSとPFOAの合計値70ng/L以下を安全の目安としてきました。また、環境部も調査結果の発表時には、上記の数値を目安として用いてきました。

しかし、米国では、EPAの生涯勧告値は法的強制力がないこと、EPAの70ng/Lという値の安全性について問われるようになったことから、実際にPFOS/PFOAの汚染の問題を抱える地域では、州で独自にEPAより厳しい値を設定するなどの対応がとられてきました【7】。

【7】
例えば、バーモント州はPFOA、PFOSを含む5種類のペルフルオロアルキル化合物(PFAS)の合計値が20pptを超えないことを推奨している。Vermont Department of Health, “Perfluoroalkyl and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS) in Drinking Water.” http://www.healthvermont.gov/environment/drinking-water/perfluoroalkyl-and-polyfluoroalkyl-substances-pfas-drinking-water(2018年7月5日アクセス)。ニュージャージー州は最大許容濃度(Maximum Contaminant Level, MCL)としてPFOAを14ppt、PFNAを13ppt に設定する案を策定。State of New Jersey, Department of Environmental Protection , News Release,”Christie Administration Takes Action to Enhance Protection of New Jersey’s Drinking Water”, November 1, 2017, https://www.nj.gov/dep/newsrel/2017/17_0104.htm (2018年7月5日アクセス)。ニューハンプシャーはPFOS、PFOAの地下水の基準を設定している。New Hampshire Department of Environmental Services Release, “NHDES Establishes Ambient Groundwater Quality Standard for Perfluorooctanoic Acid (PFOA) and Perfluorooctane Sulfonate(PFOS)”, May 31, 2016, https://www.des.nh.gov/media/pr/2016/20160531-pfoa-standard.htm(2018年7月5日アクセス)。ATSDRレポート、p.646も参照。
米国のNGO、National Resources Defense Council (NRDC)は、複数の汚染地域を抱えるニューヨーク州の健康部委員会への要望書(”Re: Setting a Maximum Contaminant Level for Perfluorooctanoic Acid (PFOA) and Perfluorooctanesulfonic Acid (PFOS)”)を提出し、PFOSとPFOAの合計値を4-10pptに設定することを推奨している。NRDC Releases Report on PFOA, Urging Prompt Regulation, February 27, 2018, https://www.nrdc.org/experts/kimberly-ong/nrdc-releases-report-pfoa-urging-prompt-regulation(2018年7月5日アクセス)。

全米的な飲料水汚染の実態が把握され【8】、米軍基地による汚染問題としても問題化されるなど【9】、環境汚染、健康被害の深刻な問題として認識されるようになっていることがその背景にあります【10】。

【8】
Xindi C. Hu et al., *Detection of Poly- and Perfluoroalkyl Substances (PFASs) in U.S. Drinking Water Linked to Industrial Sites, Military Fire Training Areas, and Wastewater Treatment Plants”  Environ. Sci. Technol. Lett., 3, 10, 344-350, (2016), https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.estlett.6b00260 (2018年7月5日アクセス) 。有機フッ素化合物の問題に取り組む環境団体Environment Working Groupによる米国の飲料水汚染の状態を示したインタラクティブマップ等の記事も参照されたい。”Mapping a Contamination Crisis: PFCs Pollute Tap Water for 15 Million People, Dozens of Industrial Sites”, June 8, 2017, https://www.ewg.org/research/mapping-contamination-crisis#.WzGcMqf7SUk (2018年7月5日アクセス) 。
【9】
米軍基地由来のPFOS/PFOA汚染に関しては別途情報をまとめる予定である。ここでは参考としてTara Copp, ”DoD: At least 126 bases report water contaminants linked to cancer, birth defects”, Military Times,April 26, 2018, https://www.militarytimes.com/news/your-military/2018/04/26/dod-126-bases-report-water-contaminants-harmful-to-infant-development-tied-to-cancers/ (2018年7月5日アクセス)。
【10】
例えばPFOA汚染被害を起こしたデュポンへの70000人の集団訴訟に勝訴したRob Billot 弁護士の記事を参照。Nathaniel Rich, ”The Lawyer Who Became DuPont’s Worst Nightmare”, The New York Times, January 6, 2016, https://www.nytimes.com/2016/01/10/magazine/the-lawyer-who-became-duponts-worst-nightmare.html (2018年7月5日アクセス)。

そのような状況の中、上述のとおり、2018年6月20日、米国のATSDRレポートが発表されました。
ATSDRレポートは、14種類のパーフルオロアルキル基と健康への影響についてのこれまでの研究を検証した852ページのレポートで、専門家によりまとめられ、同領域の専門家の検証(peer review)を経て公表されています。パブリック・コメントを7月23日まで受け付け、重大な変更が必要な場合は再度の専門家の検証を経て、最終版がリリースされます【11】。

【11】
ATSDR ”PFAs Toxicological Profile Key messages June, 2018”  https://www.atsdr.cdc.gov/docs/PFAS_Public_KeyMessages_June20_Final-508.pdf (2018年7月6日アクセス)。

同レポートは、これまで安全であると考えられていた値より、大幅に低い値が示されていることから、環境政策を後退させているトランプ政権下のホワイトハウス、EPA、国防総省が社会的反響を恐れ、公開を拒んでいた問題のレポートでした【12】。有機フッ素化合物の汚染に取り組んできた団体、議員、メディアから早期の公開が強く求められ、公開に至ったという背景があります。

【12】
この事実はPoliticoの調査報道により明らかになった。Annie Snider, “White House, EPA headed off chemical pollution study”, Politico, May 14, 2018,  (https://www.politico.com/story/2018/05/14/emails-white-house-interfered-with-science-study-536950). (2018年7月5日アクセス)。

ATSDRレポートの中では、4種類の有機フッ素化合物の最小リスクレベル(Minimal Risk Levels, MRLs)が算出され【13】、PFOS/PFOAのEPAの生涯勧告値の7-10倍以上低い数字が算出されていると報道されています【14】。

【13】
PFOS・PFOAの他に、PFHxS、PFNAのMRLsが挙げられている。
【14】
Ellen Knickmeyer, “Report finds industrial chemicals more toxic than thought”, AP News, Jun. 20, 2018, https://apnews.com/54e8af9f5bb04c3084eff98f674cf6f5(2018年7月5日アクセス) , Stephanie Ebbs and DR. Karine Tawagi, “Threshold for harmful chemicals in drinking water lower than thought: Study”, ABC News,June 21, 2018 ,https://abcnews.go.com/Politics/threshold-harmful-chemicals-drinking-water-lower-thought-study/story?id=56029597(2018年7月5日アクセス)。

それは、従来、発生への影響単独で算出されたものではなく、免疫への影響を考慮にいれたことによるものであることがATSDRのリリースに述べられています。そのリリースでは、ATSDRのMRLsとEPAの生涯勧告値は目的や用いる状況が異なること、MRLsが規制値を規定するもではないことも述べられています【15】。

【15】
ATSDR”PFAs Toxicological Profile Key messages June, 2018”,  https://www.atsdr.cdc.gov/docs/PFAS_Public_KeyMessages_June20_Final-508.pdf (2018年7月6日アクセス)

しかし、専門家がATSDRのレポートの数値を、EPAの生涯勧告値飲料水のレベルに換算するとPFOAは11ppt, PFOSは7pptという数値が算出されており、このATSDRレポートの発表を機に、これまでのEPAの生涯勧告値を用い続けることには専門家から警鐘が鳴らされています【16】。

【16】
Silent Spring Instituteの研究者Laurel Schaiderにより算出。Dr.Schaiderは注8のXindi C.Hu論文の共著者である。Cheryl Hogue,“U.S. report proposes lower safe level for perfluorochemical exposure:ATSDR daily dose numbers for PFOS and PFOA are one-tenth those of EPA”,Chemical & Engineering News, June 22, 2018 | Vol.96, Issue 26 , https://cen.acs.org/environment/persistent-pollutants/US-report-proposes-lower-safe/96/i26 , (2018年7月6日アクセス); Garret Ellison, “Blocked report drops PFAS safety level into single digits”, Mlive, June 21, https://www.mlive.com/news/index.ssf/2018/06/atsdr_pfas_toxprofiles_study.html  (2018年7月5日アクセス); Evan Bevins, “Brooks: PFAS advisory levels must drop: Doctor from C8 study pleased with release of federal report”, News and Sentinel, June 22, 2018.  http://www.newsandsentinel.com/news/local-news/2018/06/brooks-pfas-advisory-levels-must-drop/ (2018年7月5日アクセス)。

このような状況を鑑みると、沖縄県が、現在のEPAの生涯勧告値の値に依拠し続けることは検討するべき時にあるといえます。2015年には北谷浄水場の浄水がEPAの生涯勧告値を超える82ppt, 120pptを計測したこともあります。沖縄県は、連邦レベルや日本政府の対応を待つよりも、米国で実際に汚染問題が発生している自治体が採用する、現実的な政策や、各コミュニティの活動や政策提言【17】を参照として対策をたてていくことが妥当であり、最新の研究結果を採用していくことが必要であると考えます。

【17】
PFAS問題に取り組む地域のグループのネットワークNational PFAS Contamination Coalitionのウェブサイト参照。https://pfasproject.net//(2018年7月5日アクセス)。

概して汚染の問題は、初動で影響を過小評価、矮小化することから被害が広がることが歴史的な教訓としてあります。1970年代から使用されていた泡消火剤の対処が2013年であることを考えると、既に対策が遅れたことは否めません。このような経緯を踏まえ、今後の対応措置は予防原則的なアプローチを採用し、対処することを求めます。

上記のような状況を受け、IPPは沖縄県民の水の安全を守るため、以下を沖縄県に要請・提言します。

1.汚染の対処の経験があり、先進的な対策をとる米国の自治体の政策を参照とし、安全な水の供給のための対策を検討すること(企業局、環境部、保健医療部)

北谷浄水場の浄水は2018年のPFOS/PFOAの合計最高値は63ng/L, 2018年度の平均は41ng/Lです【18】。

【18】
2018年7月6日更新のデータ。 https://www.eb.pref.okinawa.jp/userfiles/files/autoupload/180608PFOS.pdf (2018年7月6日アクセス)。

ATSDRレポートを踏まえ、安全な水の供給のための対策、市民への対応を早急に検討することを要請します。上述のように、米国で汚染問題が発生している地域の現実的な対処を参照とすることを強く提唱します。米国バーモント州健康部では飲料水でPFOA、PFOS、PFHxS、PFHpA、PFNAの5種のPFAS(ペルフルオロアルキル化合物)の合計が20pptを超えないことに加え、曝露を最小限にするため、料理や歯磨き、粉ミルク等にも用いないように提唱しています【19】。

【19】
バーモント州健康局の”What is the Health Department’s advice for PFAS in drinking water?”http://www.healthvermont.gov/environment/drinking-water/perfluoroalkyl-and-polyfluoroalkyl-substances-pfas-drinking-water (2018年7月5日アクセス)。

また、北谷浄水場の水源で高濃度のPFOS/PFOA汚染が検出され続けていることについては、基地内の土壌汚染、地下水汚染を特定する調査の実施や、汚染の抜本的な対策が実現するように、米軍、日本政府に対しての強い要請を文書化し、交渉の過程をオープンな形で行うことを求めます。

2.PFOS/PFOAの検出地における対応を、市町村や自治会と再考すること(環境部、保健医療部、企画部)

検出地での飲用禁止の周知(看板、市報など)、特に1000pptという高濃度でPFOS/PFOAが検出されているチュンナーガーの簡易水道について、早急に対応を検討することを要請します。上述のバーモント州健康局では、市民への案内で、5種のPFASが20pptを超える水は、庭の散水にも使用しないように呼びかけており、PFASが野菜に吸収される可能性についても述べています【20】。

【20】
【19】に同じ

一方、同州の農業・食品・市場局は科学的な文献、研究者や健康部との協議の結果をもとにした「ガーデニング、商品作物とPFOAに関するFAQ」を掲載し、部局を超えて連携し、市民や農業関係者の問いにも専門家が毒物学者が答えられる体制を整えています【21】。

【21】
バーモント州農業・食品・市場局”Frequently Asked Questions About Gardening, Commercial Produce and PFOA”,  April 22, 2016,  http://agriculture.vermont.gov/sites/ag/files/PDF/PFOA_AgProductsFAQ.pdf (2018年7月5日アクセス)。

検出地の管轄が自治会でも、汚染が確認されている地域の水の管理や市民への周知の対策については、市や県などが専門家の知見をもとに、責任を持つ体制を検討することを提言します。
普天間基地周囲の汚染については、基地内での土壌汚染、地下水汚染が発生している可能性が高いので、抜本的な対策として、また、返還跡地の問題としても対処することが必要であることを県の企画部や宜野湾市とともに認識し、日本政府任せにせず、アクション・プランをたて、行動に移すことを求めます。特に跡地では「地下に流れる水の道」をコンセプトにした公園計画があります【22】。

【22】
沖縄県公式チャンネル「普天間未来予想図VR編vol.3」(平成29年3月制作) https://www.youtube.com/watch?v=yiilzLbAO3A&t=195s(2018年7月5日アクセス)。

跡地計画と汚染対処を一体に考える体制を整える事が必要です。
また、汚染の抜本的な対策について、米軍、日本政府に対しての強い要請を文書化し、交渉の過程をオープンな形で行うことを求めます。

3.保健医療部は有機フッ素化合物の健康への影響について検証し、健康調査等、公衆衛生的な対策の検討を開始すること。

米軍の泡消火剤は1970年代から使用されており、県民の長期的な曝露の影響等が懸念されます。また、上述のとおり北谷浄水場の浄水がEPAの生涯勧告値、82ppt, 120pptを計測したこともありました。ATSDRレポートでレビューされている調査報告や、米国で実施されている健康調査のレポート【23】などを参考にし、公衆衛生的アプローチを検討することを要請します。

【23】
血液調査や健康調査については、元ピーズ空軍基地の泡消火剤で飲料水が汚染されたニューハンプシャーの調査が参考になる。Agency for Toxic Substances and Disease Registry, “Feasibility Assessment for Epidemiological Studies at Pease International Tradeport, Portsmouth, New Hampshire”, November 2017. https://www.atsdr.cdc.gov/sites/pease/documents/Pease_Feasibility_Assessment_November-2017_508.pdf (2018年7月3日アクセス); State of New Hampshire, Department of Health and Human Services Division of Public Health Services, “Pease PFC Blood Testing Program: April 2015-October 2015”, June 16, 2016, https://www.dhhs.nh.gov/dphs/documents/pease-pfc-blood-testing.pdf ( 2018年7月3日アクセス)

4.県庁内で有機フッ素化合物に対する横の連携を築き、知見を蓄積すること。

現在、沖縄県が対処している有機フッ素化合物はPFOSとPFOAに限定されていますが、実際は4000種類以上の化合物が存在し【24】、米軍が使用している泡消火剤が異なる有機フッ素化合物を用いた代替物である可能性も示唆されています【25】。

【24】
経済協力開発機構(Organization for Economic Co-operation and Development, OECD)の有機フッ素化合物のポータルによると4730種類の有機フッ素化合物が確認されている。
OECD, ENV/JM/MONO(2018)7, ”Environment Directorate Joint Meeting of the Chemicals Committee and the Working Party on Chemicals, Pesticides and Biotechnology: Toward a  New Comprehensive Global Database of Per- and  Polyfluoroalkyl Substances (PFASs):
Summary Report on Updating the OECD 2007 List of Per- and Polyfluroalkyl Substances(PFAS) ,  Series on Risk Management No.39”, (May, 4, 2018) http://www.oecd.org/officialdocuments/publicdisplaydocumentpdf/?cote=ENV-JM-MONO(2018)7&doclanguage=en( 2018年7月3日アクセス)
Sharon Learner, “PFOA AND PFOS are only the Best-Known Members of a very Dangerous Class of Chemicals”, The Intercept, February 10, https://theintercept.com/2018/02/10/pfos-pfoa-epa-chemical-contamination/ (2018年7月5日アクセス)。
【25】
The Intercept のSharon Learner記者による一連の調査報道を参照されたい。特にSharon Learner,“The U.S. Military is Spending Millions to Replace Toxic Firefighting Foam with Toxic Firefighting Foam”, The Intercept, Feburuary 10, 2018 https://theintercept.com/2018/02/10/firefighting-foam-afff-pfos-pfoa-epa/ (2018年7月5日アクセス)。

沖縄県は、従来の縦割り行政で対処せず、企業局、環境部、環境衛生研究所等で連携して全体で知見を高め、情報交換を恒常的に行い、対米国への対処についても知事公室も含めてこの問題に取り組むことを要請します。

5.PFOS/PFOA汚染問題に特化した発信を行い、日本政府の積極的な対処を求めること。

このような米軍基地特有の汚染問題が沖縄で発生している一方で、有機フッ素化合物の、国内規制がないために対処が困難になっています。防衛省、外務省のみならず、環境省、厚生労働省等に問題を整理して伝え、しかるべく対処を求めることを要求します。
また、渉外知事会等でも日米地位協定の国際比較のような枠組みの問題ではなく、このような安全や健康に係る、緊急の具体的な問題で、基地による環境汚染の深刻さ、問題解決の困難さ、日米地位協定による被害を訴えることを提案します。

以上の対応に関して、県民にその過程を適時オープンに伝えることを求めます。

以上。


写し送付先:

北中城村長 新垣邦夫
中城村長 浜田 京介
宜野湾市長 佐喜眞 淳
浦添市長 松本 哲治
沖縄市長 桑江 朝千夫
北谷町長 野国 昌春
那覇市長 城間 幹子

沖縄県議会議長 新里 米吉
沖縄県議会 総務企画委員会委員長 渡久地修
沖縄県議会 土木環境委員会委員長 新垣清涼
沖縄県議会 文教厚生委員会委員長 狩俣信子
沖縄県議会 米軍基地関係特別委員会委員長 仲宗根悟

宜野湾市喜友名自治会長 知念 参雄
宜野湾市自治会長 花城 君子

宜野湾市軍用地等地主会 又吉 信一
一般社団法人沖縄県軍用地等地主会連合会 眞喜志 康明

沖縄防衛局長 中嶋 浩一郎
外務省特命全権大使(沖縄担当)川村 裕

環境大臣 中川雅治
厚生労働大臣 加藤 勝信


※送付した文書に間違いがありましたので訂正したものをこちらにアップしています。 ADSTDRレポートに関する提言要請文 PDF –
この件に関する問い合わせ先:
The Informed-Public Project 代表 河村 雅美
director@ipp.okinawa
ウェブサイト:https://27labo.com/ipp-test/

この記事をSNSで共有する